ほっとモナカのホットひと息

ブログ再開! 厭世気味にシャウトするよ。

僕が見た風景は一つなのだろうか

夕飯のあとに一通りやるべきことを終えて、走りに外へ出た。確か10時手前ぐらいだったと思う。家の中では聞こえてくる雨音と共に作業をしていたのだが、夜道は静かなものだった。雨が上がっていなかったらそもそも走るのは諦めていた。

雨上がりの夜道を、しかもいくぶん寒くなってきた中を走るのは初めてかもしれない。僕は目の前に広がっている街の様子を描写してみたいと思った。

物を書くようになってから、僕の生活の中には変化が訪れたといえる。だいぶ大げさな言い方だけど。例を挙げるとするならば、たとえば雑踏の中、電車内、いつも歩く帰り道。そういった目にしている状況を文字にしてみたくなる。これがとても難しい。けれど、何年も続けているうちにコツのようなものは掴めてきた。僕のような若輩者が言う必要の無いほどに、ありふれたコツだ。

「五感で捉えること」――さあ、準備運動で火照った身体を使って世界を感じ取ろう。

 夜道は白く霞んでいた。色彩の薄れた町通りをLEDの寒々しい街灯が照らしている。足元にある水たまりは白い光を受けて艶めかしく揺れ、濡れたアスファルトを踏む感触が日中の出来事を私に教えてくれた。やや早足で歩き出すと霧が肌にまとわりつくのを感じる。半袖は寒いかと思ったが、これは心地良い。窓を開け放した家からラジオの声が聞こえてきた。雨は朝から降り続けていた。私も帰ったら換気をしよう。徐々に地面を強く蹴っていく。湿った空気で肺を満たし、吐く。電柱のそばで私を食い入るように見つめてきた猫は、私が近づいてくると見るや一目散に逃げだしていった。脅かすつもりは無かったと、詫びる暇もなくその場を去る。滲んだ町並みを掻き分けるように、私は走った。

目標の時間を超え、私は脚を緩める。熱を帯びた身体を引きずるようにして、荒い息を空に向かって吐き出す。その時、気がついた。地上を濡らした黒雲は去り、夜空には星が瞬いていたのだ。暑い季節よりも輝きが増して見える空は、街の様子を描写しきった気になっていた私をからかった。白いため息が溶けていった。

 

(昨年の10月ごろの話。表現までも走っちゃってる……)